アラサー女の 成人ADHD記録〜ストラテラ飲んで仕事します〜

アラサー女、成人のADHDだけど、ストラテラの力を借りて、わりと楽しく生きてます。

映画『Blackfish』感想 水族館のシャチは殺人者なのか、それとも犠牲者なのか

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※今回の記事はADHDとは関連ありません。ただのいきもの好きとして書いてます。

2010年にアメリカの水族館で起きたシャチによるトレーナーの死亡“事故”の真実を暴くドキュメンタリー。世界中で話題になったものの、 日本では劇場未公開だった映画「Blackfish」。いきもの好きとして、とても興味があったのですが、自分の英語のヒアリング力に自信がなく手を出せないでいたところ、iTunes上で字幕版レンタルがあることを発見し、やっと観ることができました。

Blackfish (字幕版)

Blackfish (字幕版)

  • Gabriela Cowperthwaite
  • ドキュメンタリー
  • ¥800

 


Blackfish - Official Trailer - YouTube

映画「Blackfish」のあらすじ

水族館で飼育中に数人を死亡させたシャチの“ティリクム”に迫ったドキュメンタリー。監督兼製作のガブリエラ・カウパースウェイトは、シャチの驚くべき生態、悲惨な飼育状況、トレーナーたちの人生と失われた命、数十億ドル規模の水族館産業が彼らにもたらすプレッシャーについて探り、ショッキングな映像や感情に訴えるインタビューを集めた。痛ましく、緊張感漂うストーリーは人間と自然の関係について考えさせるだけでなく、高い知能や鋭い感覚を持つ身近な哺乳動物から、我々人間が何も学んでいないことを知らしめる。

 

 

 

 

 この映画を語る際に引き合いに出されるのは、やはり「ザ・コーヴ (THE COVE)」でしょう。和歌山県の太地町のイルカ漁を“反捕鯨運動(イルカ解放家とも言うらしい)”の人たちがつくったドキュメンタリーです。こちらが、初めから日本のイルカ漁批判で自分たちに都合の良い編集をしてしまっているのに対して「Blackfish」は、真実を探りたいという監督の作品で、変に自然保護活動に持って行こうとすることなく、公平に描かれていると感じました。

 

映画「Blackfish」感想

一言で言えば、犠牲者のトレーナーたちとそして何より、シャチのティリクムが、あまりにも可哀想で、とてもショックを受けました。シャチは、その体の大きさや、食性などから「海のギャング」などと呼ばれ怖いイメージを持つ人もいますが、とても知能が高く、好奇心旺盛で、仲間との繋がりを大切にする社会性の高いいきものとされています。実際に、日本の水族館で見るシャチは、トレーナーとよくコミュニケーションをとっており、水槽越しにお客さんの動きを真似て遊ぶなど、とても可愛らしい姿を見せてくれます。映画の中では、実際にシャチのトレーナーをしていたスタッフが、水族館でのシャチとの交流については愛情を持って接していて、信頼関係で結ばれていたと思っていると語っています。きっと、いきものを愛するトレーナーの気持ちや行動には何の嘘もなかったのだと思います。問題は彼ら、というより全ての人間が、シャチといういきものについての知識が無さすぎたということ。水族館に連れてこられるシャチは、運搬費用を抑えるために、運びやすいサイズであるこどもがターゲットにされます。捕獲船に捕まってしまったこどものシャチを移送する作業の間、群れの仲間はずっとその場に留まり鳴き続けるそうです。クレーンに吊られ、トラックで運ばれた先は、四角いコンクリの狭いプール。そこには、すでに暮らしている別コミュニティから来たシャチがいて、相性が悪ければ、攻撃されボロボロになります。それでも、狭いプールの中は逃げ場がなくてどうすることもできない。そんな暮らしが、何十年も続くとしたら…。自分に置き換えて考えただけでも恐ろしくなります。そんな中で、赤ちゃんが生まれても、わずか数年で引き離されて別の水族館へ連れて行かれてしまう。子が連れて行かれる時、母親はずっと悲しい声で鳴き続けます。そんな犠牲の上で成り立っているのが、人間が歓声をあげて楽しむ娯楽「シャチのショー」です。社会性の高い、巨大ないきものを、人間が欲望を満たすために、都合よく仕分けして小さな人工のプールに閉じ込める。それが、今の水族館の現実です。「全く知らなかった」と、言い切れるでしょうか?みんな、直視しなかっただけです。考えないようにしていただけ。なので、この映画は、とても良い作品と言えるでしょう。ドキュメンタリー映画は、事実を伝え、問題提議をすることにあるのですから。この映画を見た人の感想の多くは、「もう、シャチのショーは楽しめない」ではないでしょうか。従来の作品だったらこれで終わりだったかもしれませんが、この映画のすごいところは、現実に社会を動かしてしまったところです。

 

映画「Blackfish」の影響

2014年11月に、アメリカのシーワールドの経営会社は今後シャチの「芸を見せるショー」を段階的に廃止していくと発表しました。理由は、映画「Blackfish」が話題になったことで、シーワールドに批判が集まり、株価も下がり、入場者が激減したこと。シーワールドと関係がある企業までバッシングを受けるほどの大きな運動となりました。飼育を廃止するわけではなく、「芸を見せて楽しませる」から「環境教育」へ内容を変更するとのこと。どんな内容になるのかはとても興味深いですが、段階的になので、もう少し時間がかかりそうです。でも、この映画は確実に人間といきものの関係の歴史を変えた一作になりましたね。映画が、じゃなくて、ティリクムが、というべきかな。これまで、大衆が、珍しいいきもの、大きないきものを見たがるから、動物園・水族館は希望に応えて、珍しい、大きないきもの合戦をしてきました。ジンベエザメなんか典型的ですよね。でも、ついに大衆の求めるものに変化がやってきました。アメリカでのこの流れは、あと数年で確実に日本にも来るでしょう。

 

個人的に思うのは、欧米の動物愛護団体の圧力、恐るべし。です。今年の春あたりに話題になったイルカの追い込み漁による入手禁止もそうですが、これまで(何も考えてなかった)一般の人たちを、ドキュメンタリー映画というショッキングな映像と感動を煽る編集で動かし、一気に自分たちサイドへ「情」を動かすことに成功したなという印象です。「シャチの曲芸ショー」に反対するのは、私も同意見です。でも、ハリウッドスターから、ミュージシャンから、小学生までが、「シャチのショー反対!水族館反対!」になると、逆側に一気に傾きすぎないか心配になります。というのは、今の大人が成長するまでに本物のいきものに出会った場所の代表格が、動物園と水族館です。例えば、こどもができてどこに出かけるかという時も、選択肢に動物園や水族館があるのではないですか?こどもに伝えたいものがある場所、というのが、一番のシンプルな理由な気がします。人間より大きないきもの、小さないきもの、飛べるいきもの、泳ぐいきもの。人間とは全く違う、あるいは似ている他の存在に興味関心を持つことこそ、周りのいきものや環境を大事にしようとする意識の芽生えではないでしょうか。動物愛護団体の人たちは、動物園、水族館をボイコットしたって、自分たちでせっせと世界中を回って、野生の動物の姿を見に行くかもしれません。でも、一般人はそこまでできない。その結果、本物のいきものに触れる機会がない→関心を持つ機会がないになりそうな気がするのです。だって、イルカを可愛いって思うのも、水族館でイルカを見てきた経験があるからでしょう?そもそも、イルカの解放運動の中心人物は元イルカの調教師ですからね。つまり、「よく考えた結果、今の飼育方法に反対」する立場になるとしても、まずは「知る」ための場は残しておかなければならないと思うのです。

 

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映画「Blackfish」を観て考えたこと

と、いうことで、「Blackfish」鑑賞後の自分の考えは、「動物園や水族館にもっと行こう」です。それも、自分が納得出来る動物園や水族館を見つけて、支持することが必要だと思っています。いきものが窮屈に囚われていて可哀想だと思うなら、そうでない展示飼育をしている動物園や水族館を支持してみるのはどうでしょうか。北海道の「旭山動物園」に始まった、行動展示ブームは、いきものたちが本来の能力を生かして活動的に動く様子が見られることで人気を集め、いろんな施設がこれに続けと次々と展示改修を始めました。今月、大阪にオープンした「NIFREL(ニフレル)」も感性にふれるをテーマに、色や能力など、驚きや感動を伝える工夫を凝らした展示がたくさんあるそうです。つまり、今、動物園・水族館はちょうど過渡期真っ最中なのです。昭和の時代の檻に閉じ込めたいきものを眺める展示方法から、いきもののその魅力を最大限に引き出す展示へ。そして、いきものにとっての幸せを可能な限り追求し確保する「環境エンリッチメント」の視点を持った園館がどんどん増えています。 古い水族館だから、改修費用がないからできていないというわけではありません。飼育員が我が子を育てるように大切にいきものに接している姿をきちんと見せるようにしている動物園・水族館はとても安心して見学ができます。東京の「すみだ水族館」や「京都水族館」は、飼育員さんが作業をしながらいきもののことを嬉しそうにいろいろ教えてくれるし、「京都市動物園」では、地域のボランティアガイドさんが気さくに話しかけてくれます。

 

「いきものがかわいそう」→「動物園や水族館にはもう行かない」という安直な考えに走る前に、いきものからいろいろな感情をもらっていることを思い出して欲しいのです。かわいい仕草を見て心がキュンとなる感じ、親子の寄り添う姿を見て、自分も家族のことを愛おしく思う気持ち、人間にはない能力を見て、「すごいなぁ、どういう仕組みになっているんだろう?」と好奇心でわくわくする気持ち。それらの場を提供してくれているのが、動物園・水族館です。連れてこなくても自然に見に行けばいいという意見は、その通り。でも、それにはまだ移行期間が必要なのです。だから、いきものから何かを感じることができる人間になり、その人たちが行動を起こせば自然と見世物小屋的な動物園・水族館は潰れ、自然に近い環境や、いきものの幸せを優先するような環境で展示を行う施設が自然と残っていくでしょう。次に、動物園・水族館に行ったら、ぜひ「人間のためにこんなところまで来ていただいている」という想いで見て欲しいと思います。そこまで、いきものにしてもらわないと、地球に生かされている仲間としての自分たちを見失ってしまうのが人間です。

 

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映画「Blackfish」の感想として、「今までシャチのショーを楽しんでいたことを恥に思う」という意見がありましたが、私はそうは思いません。「シャチがあまり跳ばなくてショボい」「全然迫力ねえじゃん」みたいな感性貧弱な方は、恥じてもらって結構。でも、シャチのその美しい姿に目を奪われ、トレーナーとコミュニケーションをとる姿に、心を奪われた、という人は、その感情を否定する必要はないのではないでしょうか?私は、日本の水族館では「鴨川シーワールド」のシャチが好きです。うまく言えないのですが、鴨川シーワールドのシャチはちゃんと飼育スタッフやお客さんに愛されているのを感じるのです。逆を言ってしまうと、某水族館のシャチは、なんだか寂しそうに見えます。水槽の広さは逆なのにです。感覚的なのでどうしてかはわからないし、事実は違っているかもしれませんが。人間が、巨大なシャチを連れてきたことは確かに間違いだった。けど、今こうして日本にいる間は、彼らが少しでも幸せに暮らせるのを願ってこれからも何度も会いに行きたいと思います。これが、「Blackfish」で事実を知った私の考えです。

 

 iTunesで日本語字幕版配信中 レンタル¥400〜

Blackfish (字幕版)

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